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コラム

ゼンマイ切れについて

2021/05/13

ゼンマイ切れとは?

ゼンマイは機械式時計を動かす動力源であり、細長く平たい金属の板がぐるぐると巻かれた状態になっているパーツのことを言います。
ゼンマイが巻き上げられることによってバネのように収縮し、その反発力が歯車に伝わって時計が動き出します。
この金属の板がどこかで切れてしまうこと、これが「ゼンマイ切れ」という状態になります。

ゼンマイが切れた状態とは?

ゼンマイが切れてしまうと、動力を生み出すことができなくなりますので、基本的には「時計が動かない」という状態になります。
最も多い症状はゼンマイの根元から切れるパターンで、リューズを巻いてもクルクルと空回りしてしまい、巻き上げの手応えがなくなります。
通常なら巻くと感じられる巻き上げが重たくなる・リューズが固くなるという感覚もなくなるので分かりやすいと思います。

イメージとしては自転車のチェーンが外れてべダルがスカスカの状態で空回りしてしまう状態と似ています。

また、ゼンマイの切れ方によっては止まらずに動く場合もあります。
根元ではなく、中間部分や外端部分でゼンマイが切れることもあり、その場合は短時間であれば動作します。
ですが、動力足りてない状態ですので精度が悪かったり、数時間で止まるなどの不具合は生じます。

ゼンマイが切れた場合はオーバーホール

ゼンマイは、「いつかは切れる」ことが前提の完全な「消耗品」という扱いになります。
使っていて切れてしまうことがあるのはもちろん、金属ですので使用や経年による劣化や金属疲労が起こります。

ゼンマイが切れてしまった場合は、新しいゼンマイに交換することで修理が可能ですが、基本的にはオーバーホールと一緒の作業になります。

現行品や流通量の多い汎用ムーブメントであれば純正の新品ゼンマイと交換するのが前提となります。
アンティークなどの年代の古いムーブメントの場合は純正のゼンマイが入手ができない場合がありますので、その場合は元のゼンマイの材質・厚み・幅・長さを測り、合わせのゼンマイで交換をすることになります。
例外として、一部特殊なゼンマイを用いたムーブメントも存在しており、純正のゼンマイはもちろん合わせのゼンマイ交換も難しい場合があります。

知っておくと良いゼンマイに関する知識

ゼンマイ交換をしたばかりなのに切れることがある

先述した通り、ゼンマイは消耗品パーツという扱いになり、バネ性を備えている金属なのでどうしても個体差が出てしまいます。
個体差がある以上、耐久性にも違いが出てしまうのはある程度仕方のないことだと思います。
特に古いゼンマイは現行のものと比べても均一性が低く、ムラもあるため切れてしまうことがあります。

切れていなくてもゼンマイ交換をする場合がある

ゼンマイを交換しなければならないのは、必ずしも切れてしまった時だけではありません。
バネ性のある金属ですので、伸縮を繰り返していくうちに元に戻る力が弱くなってきます。
金属疲労により本来の力が伝えられず、精度や持続時間が低下してしまうということです。
こういった場合もゼンマイの交換が必要になってきます。

ゼンマイ切れにより他のパーツも破損する場合がある

ゼンマイは「香箱」と呼ばれる歯車の中に収められています。
普段から力が凝縮されている状態なのですが、ゼンマイの切れ方によってはその力が一気に解放されてしまうことがあります。
本来なら24時間ほどかけてゆっくりと力を伝えるところが、切れるとその力が一瞬で解放されてしまうため歯車にも余計な負荷がかかり、歯先などが欠けてしまうことがあります。(ゼンマイ切れ=必ずしも部品を痛めてしまうわけではありません)

以上、ゼンマイに関しての基本的な知識とよく見られる症状をいくつか紹介させていただきました。

ゼンマイ切れは時計として使える状態ではなくなってしまうので、早めにオーバーホールに出すようにしましょう。