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コラム

機械式時計の精度

2021/05/12

機械式時計の精度について

機械式時計を使用しているお客様からすぐに止まる、時間が狂う、という問い合わせを頻繫にいただきます。
特に、オーバーホールをした直後なのに狂うのはなぜだ?という質問が多いです。

そこで、機械式時計というものはどういったものなのか?なぜそうなるのか?の原理を改めて説明し、理解をして頂きたいと思います。

機械式時計のムーブメントは基本的にゼンマイを動力とし、振り子の原理を使って「テンプ」と「ガンギ車」と呼ばれるパーツから針に繋がる歯車に一定の速度で動力を伝達し、回転させていく仕組みになっています。このテンプは毎時一定回数で振動しており、それを歯車で減速させ、長針、短針、秒針にそれぞれ力を伝えていきます。
テンプの振動数は一定ですが、メーカーやムーブメントによりその振動数は異なります。振動数が高いほど精度の高いムーブメントということになり、テンプの振動数が完全に安定していれば、理論上は時計は極めて正確に時を刻みます。
しかし、機械式時計はクォーツ時計と違い重力の影響を受けますので、時計の姿勢が変わればテンプにかかる重力の方向も変わります。その影響でどうしてもテンプの振動数に影響を与えてしまい、少しづつ精度にズレが生じてしまうのです。
ですので一般的な機械式時計は平均日差(1日の進み、遅れ)が10~20秒程は出てしまい、最大の場合は月に5分程度時間が狂う(1分程度はあたりまえ)ことになります。
※クロノメーター規格やGS規格のように非常に厳しいテストをクリアし、より誤差が少なくなっているムーブメントも一部あります。

また、動力源であるゼンマイの巻き具合によっても精度に影響を及ぼしてしまいます。
ゼンマイが最大まで巻かれている状態では動力は安定していますが、少しか巻いていない場合、特にもう少しでほどけきってしまう時は、動力が非常に不安定になり、テンプの振動数が変わってしまいます。そのため、正確に調整をしたとしても必ず時間に狂いが生じてしまうのです。

どんなに高価な時計であっても、どれほどシビアに調整したとしても、機械式の時計は狂いが生じるものだという理解が必要です。

そして、安定した精度を維持していくためには定期的なオーバーホールも必須であるということもお伝えしておきます。